ビジネスノウハウ インタビュー連載「起業っておもしろい!」/第16回 目標をひとつ越えると、自分が想像していなかった新しい目標に出会える

一般社団法人 MUSIC SHARE
代表理事 本田みちよ さん

「起業っておもしろい!」をテーマに、先輩方に起業を意識したきっかけやリアルな体験談を聞くインタビュー連載第16回。
2016年3月に一般社団法人 MUSIC SHAREを立ち上げられた、ミュージシャンの本田みちよさんにお話を伺いました。
一口に「起業」と言っても、株式会社、合同会社、個人事業主・・・と様々な形があるなか、本田さんが選んだのは一般社団法人。
一般社団法人 MUSIC SHAREは、2012年に本田さんが「才能あふれる全国のミュージシャンと音楽を愛する人々をつなげていきたい」と始められた、オンラインの音楽番組「MUSIC SHARE」の活動をベースとした非営利型の一般社団法人です。

-- お仕事の内容について教えてください

世界に誇れる日本のミュージシャンを紹介する音楽番組「MUSIC SHARE」の運営・制作を行っています。独創的な音楽性を持ち、他にない試みにチャレンジしているミュージシャンを、ジャンルを問わず紹介しています。

番組発足当初から現在に至るまで、カメラマンや音響をやっている友人で集まって制作・配信を行う活動という意味では何も変わりはないのですが、当初はもう少し気軽にやっていました。
ですが、徐々に“産業中心ではなく、音楽そのものを中心とした新しい流れを発信するメディア”として全国に広がり、現在では東京のほか京都、千葉、下関、新潟、福岡、福島、大阪に2つ、熱海など全国に10のチャンネル(内5つは準備中)に広がっています。

各チャンネルは現地のスタッフが中心となり、地元をベースに活動する全国のミュージシャンの音楽や各地の音楽シーンを発信し、全国のミュージシャンと音楽を愛する人々をつなげています。
現在「MUSIC SHARE」は、Youtubeのほか、サイバーエージェントの映像配信プラットフォーム「FRESH!」を使用しています。
また、レッドブルとパートナーシップを結んで「Red Bull Studios Tokyo」で番組を収録し、PR活動などをサポートしています。

The SAMOS : MUSIC SHARE#51@Red Bull Studios Tokyo

-- 起業を意識したきっかけとご決断について教えて下さい

2012年から始まった音楽番組「MUSIC SHARE」の規模が段々大きくなり、活動を通じて企業や大学との活動に可能性が見えてきたので、諸々の契約上、個人ではなく組織にしなくてはならなくなった・・・というのが正直なところです。
一般社団法人、NPO法人、株式会社などあらゆる業態で考えていった中で、手間がかからない、利益を第一目的にしていないということで非営利型一般社団法人に行き着きました

運営資金は100%寄付。「非営利型」ならではのジレンマもある

-- 起業時大変だったこと、印象深かった出来事などを教えてください

定款や計画書といった資料作りや各種税金の申告など、法人設立に関して何もわからなかったので大変でしたね。
MUSIC SHAREは、非営利型の一般社団法人ですので、寄付金など、法人税法上の収益事業以外からの収益に関しては法人税が免除されます。
喜びの反面、収益を上げられないとなると出演ミュージシャンの楽曲やグッズの販売も、Youtubeの広告収入も得られません。「収益事業開始届出書」を提出すれば可能なのですが、収益と経費を照らし合わせると赤字になってしまう・・・。
その点はジレンマですし、今後の課題でもあります。

また、番組制作の中で一番重要なのはスタジオをどうするか?ということですが、ニューヨーク、ロンドン、パリなど世界中にオープンしてきた「Red Bull Studios Tokyo」が、2015年2月に東京にもオープンするという記事を見まして、しかも「Red Bull Studios Tokyo」は、音楽に情熱を持ったアーティストやクリエイターをサポートし、レッドブルとパートナー関係にあるアーティストが無償で使用できるスタジオと書いてあったのです。
そのニュースを知り「ここだ!」と思い、友人に繋いでもらったご縁から直接プレゼンテーションし、パートナーシップを結んでいただけたことが後の活動に大きな影響を与えてくれました。

-- 法人設立の手続きや資金はどうされましたか?

法人設立の資金は自身の貯蓄から用意しました。法務局への登録料・諸経費で20~30万円程でした。
MUSIC SHAREは、非営利型の社団法人なので、寄付金などには法人税がかかりません。
しかし非営利型の一般社団法人として認められるには、「剰余金を一切分配しない」「解散した際は残余財産を国庫や地方自治体に還元しなければならない」「血縁者が理事全体の3分の1以下ではならない」、以上の三点を定款に明記する必要がありました。
夫婦で立ち上げるとなると、理事は最低でも6名必要ということになり、信頼出来る仲間に理事になってもらいました。

また、以前、和太鼓の奏者に「日本の楽器に触れたことのない子供が多い」と言われたことが心にずっと残っていました。浄瑠璃や文楽、雅楽や和太鼓といった日本の伝統芸能である音楽の啓蒙活動もしたいと思っているので、これから文化庁などの助成金の申請も検討しています。

様々なジャンルの音楽、音に対する「豊かさ(多様性)」を提供したい

-- アーティストはどう選ばれていますか?

番組の視聴者には、様々なジャンルの音楽、音に対する「豊かさ(多様性)」を提供したいと思っています。
基本的には商業的なオーバーグラウンドでもなく、分かりづらいアンダーグラウンドでもなく、オーバーグラウンド並みの発信能力がありながら、業績に左右されない自由さと面白さを兼ね備え、自ら積極的に活動しているミッドグラウンドのミュージシャンを探しています。
ライブで見つけたり、InstagramやYoutubeなどで検索したり、友人が「この人おもしろい」と紹介していた人のホームページにアクセスしてコンタクトを取ることが多いです。

各地域のミュージシャンは、各支局のスタッフがそれぞれブッキングし、収録します。
各支局には、音楽が好きで「全国のミュージシャンと音楽を愛する人々をつなげていきたい」という「MUSIC SHARE」の理念に共鳴してくれるグループで活動しています。

海外のミュージシャンからコンタクトが来ることも

-- オンラインの認知向上や集客はどのようにされていますか?

Facebook、InstagramといったSNSのほか、「FRESH!」内のニュースアプリで番組情報の配信、海外に向け「MUSIC SHARE」公式サイトで英語のブログも更新しています。
また、法人登録してから1年未満なので、プレスリリース・ニュースリリース配信サービスのPR TIMESの、スタートアップ期間を活用し、無料でプレスリリースを配信して頂いてます。

HPやSNSでも告知をしているので、海外のミュージシャンからコンタクトが来ることもあります。
日本を訪れた外国人アーティストのサポートもしたいと思っているので、海外のミュージシャンが日本でライブをするタイミングに合わせ、青山の「Red Bull Studios Tokyo」で収録をしたり、ライブ会場に撮影に行ったりしています。

-- 活動の上で座右の銘はありますか?

自分の意志が伝わらず、相手にイライラしたり、やきもきすることってありますよね?
そんなときに、「“そもそも”理解していない人には怒る意味がない」ということをいつも頭の片隅に置いています。
「MUSIC SHARE」を始めて5年、一番変わったところですね。
そう考える以前は、良いことも嫌なことも何でも全部ハッキリ言っていたので、衝突することもあったのですが、今ではすっかりなくなりました。

-- ON&OFF切り替えはどうされていますか?

以前は企画やブッキング、SNSの更新など一日中番組制作のことを考えてしまっていましたが、先日仕事ついでにロンドンとローマを訪れ、完全オフの休暇を過ごしたところ、疲れが全部消えてそのあとの仕事が驚くほどはかどりました。
何も考えない休みがこんなに重要なのかと実感したので、休むと決めたら絶対に仕事はせず、近所の真鶴半島を散歩したり、山にドライブに出掛けたりして切り替えるようにしています。

誰もやったことのないことにチャレンジしたい

-- どのようなときにアイディアが浮かびますか?

基本的にいつでもアイディアは考えていて、突然思いついて突っ走るタイプなので、一旦落ち着いてフラットにしてから決定するようにしています。
自分でひらめいても、誰かから「こういうのやらない?」と提案されても、まずは一日よく考えます。
そのことについてお風呂でぼーっと考えていると、それをもっとよくできるアイディアが生まれたり。
瞬発力も大事ですが、一度温めるということも大事だなと実感しています。

-- これだけは手放せない!というものはありますか?

公私共に大活躍している一眼レフです。(Canon 7D、Panasonic GH4)
人を撮るのが好きで、コラムのカメラマンをやったり、スタッフや演奏中のミュージシャンの写真や動画を撮影しています。

本田さん愛用の一眼レフ

「人を撮るのが好き」という本田さん
収録時にスタッフの写真を撮ることも多いそう

誰も出会ったことのない日本の音楽や才能を世界に発信し続けたい

-- 今後の展望について

今は、手のひらに世界が広がっている時代。日本のミュージシャンも、どんどん海外に出てほしい。
日本には、誰も出会ったことのない音楽や才能がまだまだ隠れています。
世界中にレッドブルのスタジオがあるので、いつか「MUSIC SHARE」が厳選した日本のミュージシャンと各国のスタジオから音楽配信しつつ、各国でライブイベントもやるというワールドツアーをしてみたいなと思っています。

-- 本田さんの「起業っておもしろい!」を教えて下さい

私の場合は 「MUSIC SHARE」の今後の展開を考えて、法人化しました。
「こんなことをやるとは思わなかった」という人生の経験が新しい出会いにつながり、刺激となっています。
目標をひとつ越えると、自分が想像していなかった新しい目標に出会える。
次々にやりたいことができて、常に好奇心を持って物事を見ることができるのが、起業のおもしろいところだと思います。

結果を出すためには、継続すること

-- 起業したい方にメッセージをお願いします

「なんのために起業するのか?」を自分に問いかけてみてください。
結果として、私は非営利型一般社団法人という企業の形を選びましたが、どんな仕事でも言えるのは「時間を忘れてのめりこめる程好きなことでないと続かない」ということ。

結果を出すためには、継続すること。
やりたいことを見据え、長く続けていくため、使命感を持てるほど好きなことを粘り強く追及してほしいと思います。

一般社団法人 MUSIC SHARE
代表理事 本田みちよ さん
 
京都府出身

ボーイソプラノのような透明感のある歌声と、オーガニックな表現スタイルが魅力のシンガーソングライター。

10歳より京都市少年合唱団に在籍し、小澤征爾指揮のボストン交響楽団、ウィーン少年合唱団と共演するなど、歌に親しみ、音楽の基礎を学ぶ。

1997~2013年6月、エレクトロポップの先駆者と言われたOVERROCKETとして国内外で活動。
WORLD ORDERの「2012」「PERMANENT REVOLUTION」コーラス参加、吉岡徳仁監修の「カルティエ展」会場内音楽など様々な分野で活躍。
2012年7月、音楽番組「MUSIC SHARE」を立ち上げ、ブッキングから司会までを務め、未来の音楽文化を豊かなモノにするための活動に情熱を注ぐ。
2016年3月、一般社団法人MUSIC SHAREを設立。

現在は、自身の制作をしながら映画やゲーム音楽などに携わる他、WEB音楽番組の運営・企画・プロデュースや国内外のアーティストのレビューを書くなど多方面で活動中。

https://www.musicshare.jp/ http://michiyohonda.com